一巻。不空羂索神呪経は不空羂索神変真言経の序品を別訳したもので、不空羂索呪心経と同本異訳ともされる。不空羂索神呪とその神呪の功徳や念誦法を明かすという点が中心となっている。不空羂索神変真言経は体系化され教理的な経典として著名で、不空羂索観音の所依とする経典である。
本経は、金界を施した紺紙に金泥で書写されている。奥書から鎌倉時代末期の公卿である西園寺公衡(さいおんじきんひら、1264-1315)が、嘉元4年(1306)2月8日、一族繁栄と自身の長寿を祈念して書写したことがわかる。当時の公衡は、後宇多天皇の勅勘を蒙っていたが、本経書写の12日後に恩免されている。公衡は、本経と関連して「春日権現霊験記」(宮内庁三の丸尚蔵館所蔵)を発願して延慶2年(1309)に制作し、春日社に奉納した。