儒教の祖、孔子の像。儒教は古くから日本に入り、孔子をはじめとする儒教の先聖をまつる儀式である釈奠(せきてん)は宮中において8世紀の初頭には始まっていた。この釈奠においては、孔子および孔門十哲の画像に酒食を供えて礼拝が行われたという。この画像もおそらくそのような場のために制作されたものであろう。現存する孔子像としては最も古く、鎌倉時代に遡るものである。現存する室町時代以降の孔子像が中国古代の官服を付けた半側面の立像として形式化してゆくのに対し、本図はゆったりとした服を着、正面観の坐像である点もきわだった特徴である。日本画家・安田靫彦の旧蔵。