秋田・佐竹家に2巻の巻子として伝わったが、大正年間に益田鈍翁の音頭のもと一図ずつ分離されたことで著名な佐竹本三十六歌仙絵巻の一図。もともと三十六人の実在の歌仙の像、人となりと歌を書いた図に三十六図のほかに、この住吉明神の図を加えて三十七図あった。三十六歌仙以外にこのような図が加えられる例は非常に珍しく、「大歌仙」ともよばれる佐竹本の特徴のひとつでもある。摂津・住吉大社の祭神・住吉明神は和歌三神の一つとして和歌文学の神として信仰され、住吉浦は海辺の風光明媚なところでもあった。神の像としてではなく、住吉社の社頭の風景画として描いた点でも異色の歌仙絵といえる。やまと絵のたおやかな風景画として優れた貴重な作例である。住吉明神の由来を書いた位署のあとに、「よやさむき ころもやうすき かたそき乃 行あはぬまより しもやおくらん」の歌が書かれている。松永安左ヱ門(耳庵)の旧蔵。