国宝白氏詩巻はくししかん

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  • (指定名称)白氏詩巻
  • 藤原行成筆 (ふじわらのこうぜい)
  • 1巻
  • 彩箋墨書
  • 25.4×265.2
  • 平安時代・寛仁2年(1018)
  • 東京国立博物館
  • B-2533

 藤原行成(972~1028)が47歳のときに、中国の詩人白居易(はくきょい)(白楽天(はくらくてん))の『白氏文集(はくしもんじゅう)』巻第六五から八篇の詩を揮毫したもの。行成は平安時代の公卿で、「三跡」の一人と称される能書(のうしょ)であり、その一系は代々能書として活躍した。本作は、筆を少し傾ける側筆(そくひつ)という和様の筆法で、転折の部分は柔らかく、端正であるがやや軽快な印象を受ける。和様の書を大成した行成の代表作といえる。しかし、行成は奥書に、経師(きょうじ)の筆を借りたため点画がなっておらず笑わないでほしい、と書いている。奥書に続く跋語(ばつご)で、玄孫(やしゃご)の藤原定信(さだのぶ)(1088~1156?)は、保延6年(1140)10月22日に物売りの女から、小野道風筆「屛風土代(びょうぶどだい)」(宮内庁三の丸尚蔵館)と本作の2巻を購入したと記している。
 紙背(しはい)の紙継ぎ目には伏見(ふしみ)天皇(1265~1317)の花押(かおう)が捺されており、伏見天皇愛蔵の品だったことがわかる。その後、霊元(れいげん)天皇(1654~1732)の下で本作と「秋萩帖(あきはぎじょう)」(No.28)を一緒に納める箱が作られた。霊元天皇から有栖川宮家に伝えられ、明治になって有栖川宮家(ありすがわのみやけ)が廃絶となると高松宮家(たかまつのみやけ)の管理から国有となった。

(惠美)
『国宝 東京国立博物館のすべて:東京国立博物館創立一五〇年記念 特別展』毎日新聞社他, 2022, p.283, no.26.

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