麈尾は大鹿の尾の毛を挟木にはさんで、団扇形に切り揃え、それに柄を取り付けた仏具で、読経の際、僧が手に持った。鹿の群では大鹿の尾が転ずるのを見て、群が続くことから、僧がこれをもって人々を導く標としたと意味付けされている。この麈尾は唐木を呉竹を象って彫刻し、漆を塗り、挾木の中央に六花形の座金に宝珠を彫った3個の銀鋲を打って表裏を留める。毛はすべて抜け落ちている。『法隆寺東院資財帳』に「埿茎呉竹形端銀継」と記載される品に該当するとものと見られ、『御宝物図絵』には「橘寺ニテ勝鬘経御講讃ニ用ヒ玉フ」とされている。