重要文化財浜松図屏風はままつずびょうぶ

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  • (指定名称)紙本著色浜松図〈/六曲屏風〉
  • 伝土佐光重筆 (とさみつしげ)
  • 6曲1双
  • 紙本着色
  • 本紙 各 160.4 ×355.4
  • 室町時代・15世紀
  • 東京国立博物館
  • A-12476

 六曲一双の大画面を一つの連続したフレームとして、雄渾な浜辺の景とそこに生いる松を描く。右左隻の天地三分の二以上を海の水流が占め、その手前の海岸線に大きく屈曲する背の高い松と岩を配す。左隻第五、第六扇あたりで湾が大きく入り込むが、奥手に配される浜辺の松はやや小さく、枝を横に張り出した様子で、画面下部の松原とは印象を異にする。山型を重ねた波は高く、うねるかのようだが、リズミカルにこれらが配され、重々しさを感じさせない。海原には漁をする舟の姿も確認できる。やまと絵とはにわかに思えないほどの、豪壮さや雄渾さを感じさせる。
 下地に雲母(きら)を掃き、画面全体が鈍く光を放つ室町時代やまと絵屏風の典型的な技法を用いる。雲や霞には金銀の切箔(きりはく)や砂子(すなご)を撒き、その粗密によって輝度をコントロールしている。安土桃山時代以降の、金の装飾性を前面に押し出した明るい輝きとは一線を画す、月夜の薄明かりのなかで輝きを増すような室町時代やまと絵の美意識がここにある。
 伏見宮貞成(ふしみのみやさだふさ)親王の『看聞日記(かんもんにっき)』永享四年(一四三二)七月六日条にも、七夕屏風のなかに海と舟と松を描いた作例のことが記され、おそらくは本図のような画面であったことが推察される。本作の右隻裏面には「光重(みつしげ)筆浜松屏風」の押紙があるが、その制作は室町時代前期、十五世紀であることは間違いない。浜松図屏風の現存最古作にして、室町時代やまと絵屏風中の屈指の優品である。

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