絹傘と呼ばれているが、形状からして、もとは天蓋(てんがい)の一部であったと推測される。天蓋は、仏像などの頭上に掲げるものもあれば、高貴な人物にさしかける傘蓋としても用いられる。現状は三枚の裂を縫い合わせたほぼ正方形で、中央には轂(こく)を通すための小さな丸い孔を開け、その周りと四隅には綾を当てていたようであるが、現在はほとんど遺っていない。
正倉院には表に錦などを使い、裏には平絹や綾などで仕立てられた同様な形で、周りに蛇舌(じゃぜつ)と呼ばれる垂飾を飾った天蓋があることから、この絹傘も天蓋上面または裏面に用いられたものであろう。なお、正倉院には天蓋を吊すための木製の骨組が遺っている。
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