徳川家康の四天王の1人といわれた榊原康政(1548~1606)所用の具足。兜(かぶと)の鉢は六十二間(けん)の筋鉢(すじばち)で、鉢の内側には「吉道作」の銘がある。胴は黒漆塗の鉄板を菱に綴じ、左脇に蝶番(ちょうつがい)を設けた二枚胴で、七間(けん)五段下りの草摺(くさずり)をつけている。胸や籠手(こて)の手甲(てこう)には榊原家の家紋である源氏車紋(げんじぐるまもん)の金具を据える。黒を基調とした具足で、兜の正面に銅鍍金(どうときん)の三鈷剣(さんこけん)の前立(まえたて)をつけ、胴の腰には銀金貝(ぎんかながい)に金蒔絵(きんまきえ)で這龍(はいりゅう)を、草摺の裾二段には立波文(たつなみもん)をあらわしている。当初は黒糸威であったが、現在兜のしころや草摺は紫糸で仮綴されている。
この具足を着用した康政の画像や、旗指物、馬印などとともに榊原家に伝わった。