背面に引合せを設けた胴に、壷袖(つぼそで)を付属する腹巻である。胴は上段から紅・白・紅糸、以下茶糸を主体とし、裾は紅・白糸威としている。草摺(くさずり)は七間(けん)五段下り、金物は銅鍍金枝菊文透彫(どうときんえだきぎくもんすかしぼり)の八双形(はっそうがた)の座に八重菊鋲(やえぎくびょう)を二点づつ打っている。
袖は腕になじむように丸く、裾をすぼませて仕立てた壷袖である。六段下りで威は紅・白・紅・茶糸と胴と同じ配色とし、冠板(かんむりのいた)は上部を直角に折り曲げて頸筋にあたらないようにした折冠(おりかむり)である。袖裏五段目の両端に紅紐を通して、腕を挿し入れて着用し、袖が翻転しないように工夫されている。
札(さね)は盛上札(もりあげざね)で、金具廻(かなぐまわり)に藻獅子韋(もじしがわ)を用い、金物などとともに室町時代の特色を示した優品で、讃岐(香川県)の揚家(あげけ)に伝来した。