「浮舟」の巻を欠く計53帖。墨流しの装飾をほどこした表紙に、通し番号と巻名を仮名で記した楮紙の帯が付けられている。桑名藩主松平定信の遺愛品と伝え、昭和10年(1935)に保坂潤治氏の所蔵となったことから、「保坂本源氏物語」とも呼ばれる。保坂氏の所蔵時にはすでに一巻欠いていたようで、箱蓋裏に保坂氏自身が「五十三帖」と記している。昭和11年(1936)には、旧国宝に指定されていた。
前半の「桐壺」から「絵合」にいたる17帖は補写本で室町時代の書写、後半の36帖は鎌倉時代の書写になる。鎌倉時代の書写については、青表紙本4帖、河内本7帖、別本25帖と別本系統に属し、源氏物語本文研究上に不可欠の資料として貴重である。