『太平記』中の挿話や謡曲「土蜘蛛」として有名な、平安中期の武将・源頼光の土蜘蛛退治物語を描いた絵巻。
ある日、空を飛ぶ髑髏をみつけた頼光は、渡辺綱とともにこれを追って京都・神楽岡に至る。この地のあばら屋で出会ったのは数々の妖怪。ついには巨大なけものが現れる。頼光と綱が力を合わせてこれを倒すと、その正体は土蜘蛛であった。
あばら家を舞台に、次々に登場する多種多様な妖怪と、これに立ち向かう頼光の様子が巧みに描かれる。室町時代に流行する御伽草紙絵巻の先駆的作例と考えられている。
素朴な画風の御伽草紙絵巻が多い中、本絵巻は鎌倉時代の正統派やまと絵の本格的画風を備えている点で貴重である。