『延喜式』(50巻)は、平安時代中期に律令の施行細則をまとめた法典である。この古写本は27巻分が現存し、1巻を除く残りすべては平安時代後期に書写された現存最古の写本であり、また諸写本の中でこれほどまとまったものは見られない。摂関家の九条家に伝わったため、「九条家本」という。
筆跡は何人かに分かれるが、ほぼ同時期に摂関家の周辺で書写されたと見られ、文中には朱墨で仮名や読みを助ける乎古止点(をことてん)が書き込まれる。27巻のうち23巻分の紙背には、約190通の文書があり、太政官符案や讃岐国の戸籍の残巻、『延喜式』に先立つ『弘仁式(こうにんしき)』の断簡、多くの書状などが含まれ、史料群としても非常に貴重である。