阿弥陀如来が住む西方極楽浄土の様子を中心に、浄土三部経の一つである『観無量寿経』(『観経』)の序文や十六観想を絵画化したもの。「当麻曼荼羅図」や「観経変相図」とも称される。
画面は中央(内陣)と上方を除く3辺(外陣)から構成されている。内陣には、阿弥陀如来と観音菩薩、勢至菩薩の三尊を中心に、諸聖衆(しょうじゅ)三十四尊や蓮池、楼閣といった極楽浄土の様子が大きく描かれる。外陣は向かって左縁に、『観経』序文にある阿闍世(あじゃせ)太子の説話を描き、右縁には本論である十六観想のうち第一観想から第十三観想を、下縁には第十四観想から第十六観想に説かれる9段階の阿弥陀の来迎(九品来迎)の場面を描く。
これらの図像は、中将姫が蓮糸で一夜のうちに織り上げたとの伝説を持つ綴織(つづれおり)の「当麻曼荼羅図」(国宝、奈良時代あるいは中国唐時代・8世紀、奈良・当麻寺)に由来する。その図像は鎌倉時代、阿弥陀を信仰する浄土宗・法然(1133~1212)やその弟子で西山浄土宗の祖・証空(1177~1247)らの唱導により数多く転写され流布した。
4mもの大きさを誇る原本の8分の1サイズで描かれた本図は、鎌倉時代の優品の一つで、如来や菩薩の顔貌や体躯など、細部まで丁寧に表現されている。また諸尊や蓮池、空に至るまで金泥をふんだんに使用し、群青や緑青といった寒色を中心とした鮮やかで透明感のある彩色が施されている点も注目できる。なお本図は滋賀県大津市の円満院に伝来し、旧表装の表背には永享7年(1435)の修理銘が墨書されていた。