『筆耕園』は室町時代以降舶載された中国画を集成して手鑑としたものと考えられる。収める作品の数は60図を数え、その主題、画法、様式は多岐にわたり、これに応じて各図につき画家の名を各々に付している。
鑑識された画家の数は49名にのぼり、宋元時代の画家の名を多く挙げているが、中には明時代の画家の名を挙げ、また明時代の作も交じっていることから、作品の収集と鑑識には中、近世における舶載中国画の時代的な動きが反映しているといえよう。もとより、これらの作品に付された鑑識は、そのままに信じることはできないが、60図の中には南宋の名家夏珪(かけい)の山水図のように得難い作品が含まれるだけでなく、他にもかなり質のよい作品があり、また鑑識とは別に落款・印章を有する作品もあり、手鑑として高く評価すべき内容をもっている。室町時代以降の大きな絵画史上の流れである漢画は、この種の中国絵画を手本としてきたが、本手鑑は中国絵画の受容の有様を如実に示す貴重な史料ということができよう。