宮廷や寺院などで使用された食膳具あるいは仏器の一揃いで、法量をわずかずつ異にする相似形の無台鋺8個を入れ子状に重ね合わせる。銅・錫・鉛の合金による鋳造製(いわゆる佐波理<さはり>または響銅製)。正倉院宝物にも10重など各種の重鋺がみられる。体部はやや腰が張り、底部と体部の境には稜をもたず連続的に移行する。口縁内面がわずかに肥厚し、外面は口縁直下に細刻線をめぐらせる。この特徴は7世紀でもそれほど下らない時期の古墳から出土した銅鋺に近い。なお、器厚や口縁部の形状など細部の特徴が異なるものを含み、本来の組合せ、個数ではない可能性がある。