重要文化財先徳図像せんとくずぞう

画像を保存する

image 全画面表示
  • (指定名称)紙本白描先徳図像
  • 玄証筆 (げんしょう)
  • 1巻
  • 紙本墨画淡彩
  • 31.7×1323.3
  • 平安時代・12世紀
  • 東京国立博物館
  • A-10

インド・中国・日本の真言密教の祖師を中心に、さまざまな祖師、先聖先師を流麗な墨線と淡彩で描いた巻物。真言密教を伝えた初祖とされる龍猛から始まる空海などの密教の祖師、達磨などの禅宗の祖師6人、鑑真や行基、聖徳太子、鳩摩羅什、玄奘などの南都仏教関係の祖師、周の武王、孔子などの中国の先聖先師、合計46人を描いている。
図は表面の滑らかな上質な紙に描かれ、祖師を描く線は全体に細めの線で、滞る部分の無い流麗な線である。衣の裾の襞を表す細かい屈曲を含む長い線も、一筆で淀みなく引かれている。衣の部分は筆の腹を使ったやや太目の線を交えた、適度な抑揚のある線を用いて衣の柔らかさを表現し、肉身の部分は筆の穂先を使った均一な細い腺を用いて、特に手の表現に見られるように骨格の硬さを表現しており、描かれるものの質感の違いを巧みに描き分ける練達した画技が伺える。
筆者については、巻末奥書から、玄證(1146~?) の書写になることが知られる。玄證は真言密教の各流派を総合的に研究した学僧で、多くの聖教類を書写、収集したことで知られている。彼の自筆あるいは所持にかかるものは玄證本と呼ばれ、中でも、自筆の白描図像はその優れた画技で著名である。本作品は玄證本図像の中でも特に優れた作風を示す、代表作というべきものである。

部分一覧

読み込み中