重要文化財浜松図真形釜はままつずしんなりがま

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  • (指定名称)蘆屋浜松図真形釜
  • 芦屋 (あしや)
  • 1口
  • 鉄製
  • 室町時代・15世紀
  • 東京国立博物館
  • E-19998

釜はもともと湯を沸かす厨房道具であったが、鎌倉時代に入り茶の湯が隆盛するとともに、喫茶専用のいわゆる茶の湯釜が作られるに至った。この茶の湯釜の製作地として名高いのが、筑前国(福岡県)遠賀川河口の芦屋と下野国(栃木県)佐野の天明である。
この浜松図真形釜はその芦屋を代表する名釜で、数ある茶の湯釜の頂点をなすものである。口づくりはしまりのある繰口(くりくち)で、こころもち広めとなり、撫肩(なでがた)の胴のやや下方に雄勁な鬼面鐶付をつけている。地肌はきめが細かく、茶褐色に渋い光沢があり、肩には一条の紐をめぐらし、裾には霰(あられ)をもって洲浜を表して、そこに屈曲の多い枝ぶりの松を繊細な調子で鋳出している。こうした真形の形姿、なめらかな地肌は芦屋釜の特色をよく示すものであり、天明釜の独創的な形姿、荒びた力強い地肌とは対照的である。
芦屋の地で釜の製作が行われるようになったのは古来、建仁年中(1201〜03)、明恵(みょうえ)上人が作らせ始めたと伝えるが、もとより確証はない。しかし、梵鐘や釣燈籠などの作品からは、室町初期にはすでに芦屋の鋳物師の活躍が認められている。現存する芦屋釜でもこれは最も古い部に属する作品で、その製作時期を鎌倉時代まで上げる見方もある。

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