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『賢愚経』は「賢愚因縁経(けんぐいんねんきょう)」ともいわれ、賢者と愚者に関する比喩的な小話69篇を収めた1部13巻からなる経典である。
この1巻は、「波斯匿(はしのく)王女金剛品第八」から「金財因縁品第九」「華天品第十」「宝天品第十一」までと、「摩訶令奴縁品(まかれいぬえんぼん)第四十八」の末尾からなり、総行数は262行である。第1紙の料紙の長さが短いことなどから、13巻本ではなく、16あるいは17巻本の『賢愚経』を用いたことが想定される。東大寺に伝来したことから「大和切(やまとぎれ)」、また聖武天皇筆との伝承もあって「大聖武(おおじょうむ)」の名で呼ばれる。 料紙は「荼毘紙(だびし)」という、俗に釈迦の骨粉を混ぜたものといわれるが、実際には、香木の粉末をすき込んだ厚手の上質紙に、貝の粉を焼いた胡粉(ごふん)を塗ったものである。その上に薄い墨で罫線が引かれている。
写経は一般に1行17字書だが、この『賢愚経』は1行11字から14字で書写され、大ぶりな字形で量感のある筆線は、端正で気迫に満ちている。中国からもたらされた写経とも見られるが、渡来人が書写したという説もあり、詳細は明らかでない。
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