明徳元年(1390)に足利義満たちが奉納した、それぞれ意匠の異なる13合の手箱のうちの1合。四隅を丸くし、各辺を膨らませ、蓋を盛り上げ、蓋と身の合わせ目には白鑞(はくろう)製の縁を付け、身の長側面中央に紐金具を打った伝統的な形式である。箱の中には、白鑞の縁を付けた大小の懸子(かけご)を入れ子にして掛けている。身と大の懸子の内側には赤地蓮華唐草文錦を貼り詰めている。総体詰梨地とし、蓋表と側面の各面に、研出蒔絵(とぎだしまきえ)で盛り土を描き、高蒔絵でそこから伸びる松と椿を描いている。椿の花や葉には青金(あおきん:金と銀の合金)の金貝(かながい:金属の薄板を整形して貼り付ける)も用いている。また盛り土の稜線や樹の幹に金銀の切金(きりかね:金属の薄板の小さな角片)を置いている。蓋裏も同意匠であるが、技法を一段階控えて、高蒔絵だけの表現となっている。さらに、大の懸子の外側面と小の懸子の四側面表裏には、研出蒔絵で松と椿の折枝をあしらっている。
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