『紫式部日記』は、寛弘5年(1008)、中宮彰子に敦成(あつひら)親王(のちの後一条天皇)が誕生した前後の記事が全体の大きな部分を占め、皇子生誕の模様や、産後のさまざまな祝いの儀の様子が記されている。その日記を、平安時代の伝統的やまと絵の様式を色濃くひきつぐ絵とともに鎌倉時代に絵巻化したものが、この「紫式部日記絵巻」である。現存するのは日記の一部で、現在はさらにいくつかに分散して所蔵されている。
この断簡は、そのうち大倉家旧蔵の1幅で、内裏で行われた盛大な50日の賀(誕生50日目の祝賀の宴)の一段。画面下方に見える皇子の外祖父、藤原道長が皇子に餅を供する儀式の場面である。まるまると太った小さな赤子の皇子が可愛らしい。画面右下隅の女房が紫式部であろうか。
この段の前に、中宮に抱かれた皇子に「まるで雛遊びの道具のような」膳部が供される段や、祝宴での公卿たちの酔態が描写される段(五島美術館本)がある。
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