本図は、寛政6年5月河原崎座上演の「恋女房染分手綱」に取材した作品。
「恋女房染分手綱」は、由留木家のお家騒動を背景として、伊達の与作と重の井の恋、それにまつわる悲劇を描いたもの。由留木家の家臣伊達の与作が、若殿の恋人芸妓いろはの身請け金を鷲塚八平次らに盗まれ、さらに腰元重の井との不義により主家から勘当される。重の井の父で能役者の竹村定之進が責任を感じ切腹をしたことにより、重の井は許されて姫の乳人となる。与作と重の井の間に出来た子供は馬子三吉となっていたが、名乗りをせずに別れる「重の井子別れ」が続き、やがて鷲塚一味の悪事も露見し、与作と三吉が八平次を討って主家に戻るという筋書きである。鷺坂左内に詰め寄られ、悪事が露見しそうになった場面での鷲塚八平次が描かれている。